「フェザー河の襲撃」のデヴィッド・ウィスバートが製作した空想科学スリラー1954年作品。ジョージ・ワーシング・イェイツの原作を「井戸」のラッセル・ヒューズが潤色、「地獄への退却」のテッド・シャーデマンが脚色し、「フェザー河の襲撃」のゴードン・ダグラスが監督にあたった。「死の砂塵」のシド・ヒコックスが撮影を、「荒原の疾走」のブロニスロー・ケイパーが音楽をそれぞれ担当。出演者は「アスファルト・ジャングル」のジェームズ・ウィットモア、「北京超特急」のエドモンド・グウェン、「コマンド」の新人ジョーン・ウェルドン、「ホンドー」のジェームズ・アーネス、オンスロー・スティーヴンスらである。
放射能X評論(1)
核実験とモンスターで先鞭をつけたのは「原子怪獣現わる(The Beast from 20,000 Fathoms)」だが、氷に閉じ込められ冬眠状態だった古代恐竜が核実験で目覚めた設定だったので放射能と突然変異を結びつけたモンスター映画は本作が起源ではないだろうか。この種の映画に原題にない放射能や類語を邦題につけたがるのは被爆国の特殊性、盛んな核実験など時代背景もあるのだろう。
進化生物学的にも昆虫の遺伝子システムは奇異に富んでいるし、酸素濃度の高かった古代では1mのトンボが実在したらしい。虫眼鏡で見るとグロティスクな形相だし、身近にいる虫の巨大化はまさに悪夢のモンスター、ミュータントものは子供たちに大うけ、味を占め蜂、蜘蛛やカマキリ、バッタにサソリとブームになったが、所詮虫なので火器には弱い、粗製乱造で次第に飽きられたのだろう。脱線したが本作は巨大蟻の恐怖だがなかなか正体を見せずサスペンスタッチで話が進むので否応なく惹きこまれてしまう。モンスターもので博士が重要な狂言回しとなる点でも開祖かもしれない。もう少し動きが俊敏だと怖さが出るのだが当時の特撮技術では致し方ないでしょう。古典SFの話題作、勉強になりました。